日本生気象学会

Japanese Society of Biometeorology

会長あいさつ

永島 計(早稲田大学)
2020年4月

このたび、横浜桐蔭大学 星 秋夫前会長のあとを受け、会長に就任いたしました。本学会が、会員のみなさまの研究活動をますます活発にし、社会に大きく貢献する学術集団となるよう尽力いたします。同時に、会員や関係の方々のご協力を切にお願いする次第です。

本学会は、環境生理集談話会および生物気象研究グループといった学術集団を基盤として、1962年に発足されました。生気象学とは、主に生命と生命をとりまく環境を対象とする学問です。学会の創立に関わった先輩方の理念をお聞きすることは今となってはできません。しかし、単にこれら2つの領域、そして研究者を統合することではなかったと思っております。
現在在籍する会員の背景となる分野は、医学、工学、地理学、気象学、体育学、生活科学、農学など多岐にわたっています。細分化していくのが最近の大きな学問の流れですが、改めて生命と環境の関わりを研究対象とする学際的そして包括的な学問の構築場所として、生気象学会を継続、発展させたいと考えています。会員の皆さんには各々の分野の専門家であると同時に、是非、生気象学者として活躍していただきたきたいと期待しております。学会の理念の実現のためには、これからも新しい学問分野や技術導入、政府や企業との繋がり、研究費の獲得が必要であると考え、情報交換できるよう努力していく所存です。

環境と生命の関わりは、近年、大きな社会問題となっています。熱中症は本学会で取り組んでいる大きなテーマの一つです。2006年から学会内につくられた熱中症予防研究委員会は、熱中症予防指針を作成し、多くの政府機関や民間企業でも採用され、運動や労働の現場の安全対策として用いられています。奇しくも、私の就任と重なってしまった新型コロナウイルスの世界的な拡散は、もとをただせば生命と環境の関わりに端を発するものであると言えます。生命とも物質とも区別のつかないウイルスは、生物に寄生し増殖し、次の生物に伝えられることではじめて活動が維持できます。新型コロナウイルスは、動物から人へ、人から人への伝搬し、拡散しました。ここには、渡航をはじめとする人の社会活動、交通や建築物の環境、宿主としての人の免疫応答、医療の現場での防護服の問題などが原因として複雑に絡み合っています。このような衛生、医療の問題に対しても、われわれ生気象学者が社会に直接寄与できる研究テーマ、技術の創出が可能です。

最後に、理念の実現には多くの若い研究者の学会への参加が必要です。大学そして、企業に所属する研究者の学会加入を促進したいと考えます。また、学会を基盤とした研究費の取得や、大学/企業間の共同研究の促進を行いたく思います。学会会員は男性が多く、理事や評議員も同様の現状があります。すでに、理事会のメンバーは決定されていますが、次の時代にむけて、風通しのよい楽しい学会にしていくには、一般女性会員の増加、評議員や理事の女性メンバーの増加が必須です。国際生気象学会との交流や関連国際学会との連携も促進いたします。学会情報の発信手段としてのホームページや雑誌出版の形態も、会員の皆様と知恵を出し合ってより良いものにしたいと思っております。私の力だけでは全く不可能なことですので、是非お力添えを再度お願いする次第です。