日本生気象学会

Japanese Society of Biometeorology

演者情報

小出敦也

早稲田実業学校
アスレティックトレーナー

略歴

高校卒業後にアメリカへのコルビーソーヤー大学スポーツ科学部へ留学。
大学卒業後は米国の中高等学校勤務を始め、NBAでは日本人初となる専属トレーナーとして名門ボストンセルティックスに就任。2003に帰国、慶応義塾大ウェルネス科目講師や男子バスケットボール部トレーナー、日立サンロッカーズ(現Bリーグ)やバスケットボール日本代表チームのトレーナーなどを歴任。2014年から現職。

講演タイトル

学校現場での安全管理と熱中症対策

講演要旨

学校での部活動中の重大事故の一つである熱中症に対して様々な予防策や応急処置などが紹介されているが、実際の現場の状況や環境にあった具体的で効果的な対策が必要である。運用しやすい緊急時対応計画を作成し、ガイドラインやルールを作成するだけでなく周知や啓蒙する方法、緊急時に必要な備品なども工夫が必要である。今回は早稲田実業学校での熱中症に対する具体的な取り組みや安全管理体制を紹介させて頂きます。

三坂育正

武蔵野大学 工学部
サステナビリティ学科 教授

略歴

1991年筑波大学大学院環境科学研究科修了後、㈱竹中工務店技術研究所にて環境共生建築、ヒートアイランド対策に関する研究・プロジェクト支援業務を担当。2002年九州大学大学院博士課程総合理工学研究科を修了し、博士(工学)取得。12年日本工業大学建築学部教授を経て、23年より現職。専門は都市・建築環境工学、環境気象学。2014年暑熱適応のまちづくり研究会(涼まち研)設立。日本ヒートアイランド学会会長。

講演タイトル

熱中症対策としての暑熱環境に適応できる空間づくり

講演要旨

夏の暑さが厳しさを増す中で熱中症予防対策は急務であるが、環境改善により暑熱環境下でも熱中症リスクを少しでも低減させ、市民が快適に生活できる空間を生み出す取組みである「暑熱環境に適応できるまちづくり」について紹介する。暑熱適応まちづくりの考え方や必要な技術・手法、この取組みが空間が涼しくなるだけでなく、様々なメリットを生み出すことで地域の活性化にもつながる可能性や今後の展開等について述べる。

佐古勇策

独立行政法人環境再生保全機構 
熱中症対策部 地域熱中症対策課 課長

略歴

2001年 慶應義塾大学文学部社会学専攻卒業。コンサルティング会社数社にてISO14001等の認証取得支援、大気・水質や騒音等の測定や調査を経験したのち、2018年に独立行政法人環境再生保全機構に入職。ここ数年は熱中症対策の自治体支援業務に従事。熱中症対策の地域モデル事業や自治体職員向け研修の他、自治体による先進的な取組を集めた「事例集」づくりに関わっている。

講演タイトル

熱中症対策の自治体ベストプラクティス~クーリングシェルターと見守り・声かけを例に

講演要旨

熱中症対策は、気候変動への適応という側面と、ある種の疾病予防・対策という側面の両面を抱えることから、自治体内においてもどの部局が所管するのか悩ましい問題を抱えてきた。
ここでは、自治体によるさまざまな熱中症対策の取組のなかから、住民の健康や福祉に直結するクーリングシェルターの開設、運営及び見守り・声かけを事例に「自治体ベストプラクティス」を紹介し、その成功要因を探りたい。

横堀將司

日本医科大学大学院 
救急医学分野 教授

略歴

1999年群馬大学医学部医学科卒業。2005年日本医科大学大学院修了。1999年より日本医科大学付属病院 高度救命救急センター入職。国立病院機構災害医療センター脳神経外科医員、武蔵野赤十字病院脳神経外科医員、米国マイアミ大学医学部脳神経外科客員研究員などを経て、2013年より日本医科大学講師、2018年准教授、2020年大学院教授。専門は脳神経外科救急。神経再生、幹細胞移植、脳低温療法、熱中症の基礎実験および臨床に従事。

講演タイトル

熱中症診療ガイドラインの変更点とGood clinical practice

講演要旨

日本救急医学会は熱中症ガイドラインを刷新した。この中で特に注意すべき重症をⅣ度(深部体温38度以上)と明記した。このⅣ度はⅢ度に比して死亡率は4.5倍となり、院内死亡率は23.5%に及んでいた。ゆえに特に重症例に対してActive Coolingを含めた集学的治療を行うことを推奨した。本講演では、新しいガイドラインの変更点に触れるとともに、熱中症におけるclinical practiceについて言及したい。

氏田由可

国際労働機関(ILO) バンコク事務所・アジア太平洋ディーセントワーク
技術支援チーム労働安全衛生上級専門官

略歴

産業医科大学卒業後、同大学院公衆衛生学教室にて医学博士号取得。産業医科大学小児科学教室入局、小児科専門医取得。 1997 年より労働福祉事業団 海外勤務健康管理センターにて海外勤務者の帯同家族の健康管理を担当する。2003年ILOに採用され、バンコク地域事務所、カリブ地域事務所、ジュネーブ本部で安全衛生を担当。

講演タイトル

職場での熱中症予防に関するグローバル・地域レベルの取り組み

講演要旨

国際労働機関(ILO)の試算では、全世界の労働人口の約7割にあたる24億1000万人が猛暑の中で働いており、年間で2285万人に熱中症をはじめとする健康問題が生じ、1万8970人が死亡している。世界的な気温上昇はアウトドアだけでなくインドアでの働く環境も急速に悪化させており、国連事務総長は各国・地域に十分な対策を呼びかけている。職場での熱中症予防を推進するグローバルレベル、地域レベル、国レベルでの取り組みを紹介する。

加部 勇

株式会社クボタ 
筑波工場 産業医

略歴

1990年 産業医大科大学卒業。同年 古河電気工業株式会社 産業医。
2018年 株式会社クボタ筑波工場 産業医、現在に至る。

講演タイトル

工場における熱中症対策の改善事例

講演要旨

労働者約3,500人の工場で、7年間かけて熱中症対策に取組み、2024年は記録的な猛暑であったのにかかわらず、業務起因による熱中症をゼロにした改善事例を紹介する。具体的な改善内容は、工場の空調設備の増設、産業ロボット等の自動化設備、工場内WBGT計の設置と24時間モニター、電動ファン付き作業服の提供、ドリンクのフリーベンダー、休憩室の整備、大型冷風機の設置、等である。

平田晃正

名古屋工業大学 
先端医用物理・情報工学研究センター長

略歴

大阪大学大学院博士後期課程修了。大阪大学助手、名古屋工業大学助教授を経て現職。国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)議長、内閣官房COVID-19 AIシミュレーションプロジェクト(2021-2023)メンバー。日本学士院学術奨励賞、文部科学大臣表彰、厚生労働省感謝状などを受賞。

講演タイトル

熱中症搬送者数の予測と活用事例

講演要旨

当日および過去の気象要因に加え、長期休暇や人々の行動要因を取り入れた熱中症搬送者数の予測モデルについて紹介します。名古屋市では本モデルを活用し、医療機関や学校と連携、リスクの高い日の可視化や予防対策の計画にています。本講演では、これらの活用事例を紹介するとともに、今後の搬送者数の変化予測や、行政・教育・医療分野における実践的な応用の可能性について議論します。