日本生気象学会

Japanese Society of Biometeorology

生気象学コラム

ウメの開花と冬季の気温

松本 太(日本福祉大学)

 皆さんは、ウメはどの季節に咲くかと聞かれれば、いつをイメージするでしょうか?

 ウメの開花時期は、東北や北信、北海道では3~5月頃、それ以外の東日本や西日本では1~2月頃です。つまり前者では春、後者では冬です。地域によって、開花時期にかなり差がありますが、気候の違いを反映している可能性があります。ウメの花芽は夏に形成され,秋になると成長を停止し、休眠に入ります。そして低温にあうことで花芽は休眠から覚め、昇温に伴いさらに成長し開花します。

 では、日本各地で、何月の気温がウメの開花に関わっているのでしょうか?調査した結果、ウメの開花日は、東北や北信等では12~3月、それ以外の地域では12~1月の平均気温と相関が高い地点が多いことがわかりました。何れの地域も冬季の一定期間における気温がウメの開花に関係しているといえますが、前者では、平均気温が氷点下の日が多く、花芽の成長に時間がかかるため、その期間が長くなっていると考えられます。

ウメ開花日の等期日線図(1990-2020年 平年値、南西諸島、小笠原諸島を除く) 気象庁「ウメ開花日の等期日線図」(https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/ume2020.pdf)を加工して作成

 また近年、温暖化に伴いサクラの開花が早くなったというニュースが、テレビや新聞のニュースで良く取り上げられますが、ウメに関してはどうでしょうか?

 表は1961~80年と2001~20年の福島、宇都宮、徳島、鹿児島における12月平均気温とウメの開花日を示しています。福島や宇都宮など東日本の多くの地点では,経年的な気温上昇に伴い、開花日も早くなる傾向がみられました。一方、徳島や鹿児島など西日本の一部では,気温上昇はあるものの、開花日に遅れが生じていることがわかりました。その一因として、昇温により花芽の休眠解除が進まず,開花日の遅れが生じている可能性が推察されました。これはサクラや他の果樹でも起こりうる現象です。

12月平均気温とウメ開花日の変化

 温暖化が植物の開花に及ぼす影響は、決して単純なものではありません。ひいては人間活動に直接あるいは間接に影響してくる恐れも考えられます。ウメの関連でいえば、花見など行楽や観光のみならず、養蜂や果実栽培など農業生産や食品加工業への影響も懸念されます。

 温暖化など環境問題が顕在化する中、動植物の消長をより注視していく必要性を感じます。私たち自身も、こうした観点で自宅の庭や通勤途中の公園などで身近な植物を観察してみると、環境への意識がこれまでとは違ってくるかもしれません。

【参考文献】

気象庁:気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/ume2020.pdf)

<本コラムで紹介した研究論文>

松本 太(2017):近年におけるサクラの開花と冬季の温暖化.日本生気象学会雑誌,第53巻第1号,pp.3-11. 

https://doi.org/10.11227/seikisho.54.3

松本 太(2025):日本各地におけるウメの開花と冬季の気温.日本生気象学会雑誌,第61巻第3・4号,pp.55-63. 

https://doi.org/10.11227/seikisho.61.55

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